議題解説
1982年、アルゼンチン東部沖の南大西洋上に存在するフォークランド諸島(マルビナス諸島)の領有をめぐって英国とアルゼンチンが争った戦争。冷戦期における紛争では珍しく、西側国家同士の戦争となっている。紛争発生までに両国間でアルゼンチンへの返還交渉が展開されていたにもかかわらず、軍事独裁政権下での経済崩壊からアルゼンチンが突如フォークランド諸島への軍事進攻を開始。それを受けた英国のサッチャー政権は自身の求心力が低下していたため、国民の結束を高めるためアルゼンチンとの間に戦端を開くこととなる。かくして興った小さな島をめぐる戦争は、数百人の死者と国力の低下、アルゼンチンの民主化を招いた。
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フロント紹介
コマンドアドバイザー:足立尚也(北陸支部超神メン)
会議行動執行官:中川涼介(関西大学文学部2年、神戸研究会旧メン)
会議行動執行官:菅田悠稀(金沢大学人間社会学域法学類3年、北陸支部老メン)
報道官:佐藤杏朱(北九州市立大学法学部3年、九州支部老メン)
秘書官:奥村玲海(同志社大学法学部4年、京都研究会神メン)
秘書官:山本晴菜(鳥取大学医学部2年、神戸研究会旧メン)
秘書官:古村紫織(上智大学法学部2年、四ツ谷研究会旧メン)
秘書官:青木紅莉(津田塾大学学芸学部3年、国立研究会老メン)
アドバイザー:島村海里(横浜国立大学経済学部3年、日吉研究会老メン)
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コンセプト – Think it! –
このコンセプトは、映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(The Iron Lady)』の作中、今回の議題と同じフォークランド紛争のシーンでサッチャーが戦時内閣の閣僚からアルゼンチンを攻撃するか引き下がるかの究極の選択を求められ、サッチャーが攻撃を合図する“Sink it!”を告げたシーンを捩ったものです。今回の会議ではまさにこのシーンのような、「究極の意思決定」をデリに再現してもらいます。私は模擬国連の真髄とは「国を模擬する」ところにあると考えます。しかし、その模擬する「国」の主体とは一体何でしょうか?国民ですか?国家元首ですか?それとも国連に出席している一外交官ですか?答えは全て正解であり全て間違いであると思います。国の意思とは一主体によって決定されず、国際社会における外交の場となれば尚更間に介在する関数が多く、俯瞰的に見た際にどうしてもムラが目立ってしまいます。民主主義国家では国民の意思を代表する政権が、権威主義国家では独裁者が国家の意思決定機関として機能し、外交官が国連などの国際場裡で出力します。このプロセスの間に様々な関数が介在し、たとえ正確に国家の意思を理解していたとしても国際社会に対して出力されたときには全く違ったものになってしまう、こんなこともあると思います。しかし、この会議では「国益」として漠然なひとまとまりのものを要求するのではなく、より細かいレイヤーでの意思決定者それぞれの「人益」を設定し、それを追求することで出力された「国益」というものにリアリティを持たせます。人割とはいえ、アクター一人一人には一人一人の正義があり、彼らが考える国のための動きを取ります。したがって、デリの皆さんにはアクター一人一人となって、人益を追求し、そのアクターのため、国のためにぜひとも“Think it!”していただきたいです。
そしてもう一つ、これは一人の「もぎこっかーとして」“Think it!”してほしいなと思っております。それは、自分にとって楽しい模擬国連とは何かということです。今回は人割としてのアクターでは国家指導者から文官、軍人まで幅広く設定しており、それぞれの思想も千差万別です。そして、安保理議場においては東西第三世界様々な陣営が存在し、当事国との関係や将来的な自国の立場を考えて動く国まで、ありとあらゆる特徴を持つ国が存在します。こうして、いろんなプレイスタイルをとる幅を持たせているため、ぜひ今回では今まで得意だったプレイスタイルを伸ばしてみたり、苦手を克服したり、あるいは新たなフロンティアへと挑戦して自分にとっての楽しい模擬国連、向いているアクターとは何かをもう一度“Think it!”したりしてほしいと思っています。どのアクターであれ、デリとして、もぎこっかーとして、最大限考える機会と要素があります。ぜひとも、今回は皆さんにその考える限界、“Think it!”の限界に挑戦してほしいと思います。
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会議設計 ▼
議題正式名称:フォークランド紛争(Battle on the Falklands)
設定議場 : 英国議場、アルゼンチン議場、安保理議場
設定日時 : 1982年3月〜6月
募集人数 : 37〜45人
事前会合
アルゼンチン議場事前会合:3/23設定、3/7実施
英国議場事前会合:3/30設定、3/9実施(アルゼンチン行動開始時期を踏まえ多少の前後あり)
本会合:4/1〜設定(アルゼンチン行動開始時期を踏まえ多少の前後あり)
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論点解説 ▼
安保理議場
アルゼンチンによる軍事侵攻の是非
アルゼンチンが電撃的にフォークランド諸島を占領したことに対して、イギリスは武力不行使原則から非難し、自衛権を盾に再占領を主張する。これに対してアルゼンチンは王立海軍の軍事行動などを理由に自衛権の発動であるとして正当化を図る。
フォークランド諸島の帰属について
フォークランド諸島の帰属について、アルゼンチンは領域主権や植民地独立の観点から領有を主張し、イギリスは自決権を理由に手放すのを拒む。
内政議場(英国議場・アルゼンチン議場)
フォークランド諸島を奪還するか手放すか
二国にとっての最大の懸念事項はフォークランドの帰属がいずれのものになるかである。両国は国内に負担を強いてまでフォークランド諸島を奪還しようと動くか、それとも手放すかの選択に迫られる。その方法は、軍事占領から交渉による譲渡まで多岐にわたるだろう。
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国割・人割 ▼
安保理議場
China(ペア)
France(ペアまたはトリオ)
Ireland(ペア)
Japan(ペア)
Jordan
Guyana
Panama(ペア)
Poland
Spain(ペア)
Togo
Uganda
Union of Soviet Socialist Republics(ペアまたはトリオ)
United States of America(トリオ)
Zaire
Peru(投票権なしのオブザーバー参加)
Venezuela(投票権なしのオブザーバー参加)
※UK・Argentina両国の大使は各内政議場の大使アクターが担当します。
※ペアやトリオについては、参加人数によって変更の可能性があります。
英国議場
Margaret Hilda Thatcher(首相)
Peter Alexander Rupert Carington(外務相前半)
Francis Leslie Pym(外務相後半)
John William Frederic Nott(国防相)
William Stephen Ian Whitelaw(内務卿)
Henry Conyers Leach(第一海軍卿)
Terence Thornton Lewin(海軍大将)
Anthony Derrick Parsons(国連大使)
Patrick Richard Henry Wright(JIC議長)
Robert Michael Oldfield Havers(法務長官)
アルゼンチン議場
Leopoldo Fortunato Galtieri Castelli(アルゼンチン共和国大統領)
Jorge Isaac Anaya(海軍大将・海軍総司令官)
Basilio Arturo Ignacio Lami Dozo(空軍大将・空軍総司令官)
Amadeo Ricardo Frúgolil(国防相)
Juan José Lombardo (海軍作戦司令官)
Osvaldo Jorge García(マルビナス戦線司令官)
Nicanor Costa Méndez(外相)
Eduardo Alejandro Roca(国連大使)
※各議場とも今後変更や増減の可能性があります。
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会議の特徴 ▼
1. クライシス会議
皆さんはクライシス会議をご存じでしょうか。クライシス会議とは普段の会議とは異なり、会議中に時間の流れが存在する会議のことを指します。したがって、外の世界で起きた事件などがそのままダイレクトに議場に伝わり、それに応じた行動をとる必要があります。また、その逆も然りで会議中の行動がそのままリアルタイムで議場外の国際社会に共有されます。したがってデリはこうした議場内外の動きも頭に入れて行動をとる必要があり、議場に臨場感と没入感をもたらしてくれますがその分臨機応変な対応が求められることには注意が必要です。
2. 内政議場の存在
コンセプトで紹介した通り今回の会議では皆さんにできる限りリアルな意思決定を出力できる場を設けたいと思っておりました。その方法の一つとして、今回はまさにその国家の意思決定機関を一つの議場として設け、皆さんにそこで議論する閣僚や軍人を模擬してもらい、それによりよりリアルな意思決定を体現できるようなフィールドを作りました。
3. 西側諸国同士の戦争
戦後から約半世紀もの間国際社会は「冷戦」という構造のもとアメリカ率いる西側陣営とソ連の率いる東側陣営、そしてそれらに属さない第三世界に分断されていました。こうした冷戦期の戦争は東西陣営が衝突して破滅的な結果を招かないための代理戦争が多く、それゆえ対立軸は主に西側対東側の様相を呈しておりました。しかし、今会議ではこうしたセオリーに反して西側陣営加盟国同士の戦争であり、デリは単純な二項対立ではなくこの構造の中で当事国との関係も考え、どのように国益を掴み取るかを考える必要があります。
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参加者へのメッセージ ▼
今回、皆様にはできる限り自由でできる限り多くのことを考え、出力するためのフィールドを用意しました。模擬国連、まだまだ可能性があるな、まだまだできることがあるなと思っている方も多いことと思われます。その一つの解となれたら幸いと思っております。今年度最後に最後のステップアップ、してみませんか。
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