議題解説
キガリ改正(Kigali Amendment)とは、2016年にルワンダの首都キガリで開催されたモントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)で採択された議定書の改正案です。議定書が定める規制対象物質にハイドロフルオロカーボン(HFC)を追加する決定がなされました。
1970年代以降、地球の成層圏に存在するオゾン層がフロン等の物質によって破壊され、人体や地球環境への悪影響をもたらすのではないかという議論が科学者の間で生まれました。その後オゾン層破壊物質(ODS)に対する国際社会の関心の高まりを受け、1985年に「オゾン層の保護に関するウィーン条約」が、1987年には「オゾン層を破壊する物質に対するモントリオール議定書」が採択されました。1990年代にはオゾンホールの拡大を鈍化させるなど、モントリオール議定書は一定の成果を上げたと現在でも高く評価されています。
発効当時の代表的な規制対象物質はクロロフルオロカーボン(CFC)というフロンでした。しかし時代の変化と共に、同じくオゾン層破壊機能を持つハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が注目され、1992年のコペンハーゲン改正では規制対象物質に追加されています。
それ以降CFCやHCFCの代替フロンとして、オゾン層破壊機能を持たないHFCが冷凍冷蔵空調機器に多く使われてきました。しかしHFCは、二酸化炭素の数百〜数万倍の温室効果を持つことが分かり、先進国を中心に規制に向けた動きが活発化します。京都議定書でHFCが先進国の排出削減対象物質となった事例も追い風となり、本会議で議定書の規制対象物質に追加される運びとなったのです。
本会議ではHFCをリスト追加しただけでなく、各国の詳細な削減スケジュールも取り決められました。削減スケジュールは先進国グループ・途上国第1グループ・産油国などの途上国第2グループの3グループに分けられ、各々基準年・凍結年・基準値に含むHCFCの割合・5年ごとの削減割合が定められたのです。交渉では先進国と途上国での駆け引きがメインですが、論点に応じて立場が変わるなど国益を重視したグループに囚われない自由な会議行動が魅力的です!
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コンセプト – 星をむすぶ –
星をむすぶ
今日の模擬国連は大きな転換点を迎えています。例えば、議題の難化とそれに伴う議論の高度化、更には会議行動のパターンが増大したことによって、「理想の大使像」や「模擬国連で目指す目標」の特定が困難になっていると感じます。それによって、周囲とのギャップに悩んで模擬国連に魅力を感じなくなる人や、自らの理想とする会議行動が思い描けずにいる人も少なからずいると思います。そんな時に思い出してみてください。
「あなたがここまで模擬国連を続けてきた原動力はなんだったでしょうか?」
それは大使として国益を見出し、議論を積み重ねて合意形成をすることでしょうか?それとも熱く模擬国連に打ち込む仲間やコミュニティでしょうか?どんな答えでも構いません。きっとその答えの裏には必ず「楽しい」という原動力が隠れているはずです。
この会議に参加する皆さんには、心にも記憶にも「楽しかった」が刻まれる会議にしてほしいです。そのために私たちは、「星」と「むすぶ」という2つの言葉を掛け合わせて、この会議に携わる全員の個性を尊重し、「楽しさ」を体現する契機にしてほしいという想いを込めました。
・「星」は今会議に参加するデリ・フロント個人を表しています。1つ1つの星が独立して輝くように、各々が会議の中で「楽しみ」を見つけて活躍してください。リサーチ・戦略策定・公式討議・モデ/インフォーマル・アンモデ/コーカス・合意形成など、模擬国連のどこを楽しいと感じるかは十人十色です。自分が脳汁を思いっきり出せる分野で、議題と自国益を照らし合わせながら楽しんでくれることを期待しています。
・さらに、星と星を「むすぶ」ことで新しい形が生まれます。点と点(0次元)が結ばれて線(1次元)となり新たな概念を持つように、自分と他者が繋がることで自分では気づけなかった新たな会議の楽しみを発見・共有することが可能になるのです。価値観や国益の異なるデリと対話を行うことで、お互いの本質を理解することに繋がり、合意の形成へと直結します。勝ち負けを重視した会議行動ではなく、相手を尊重する交渉姿勢を貫き、星をむすぶことを楽しみましょう!
・最後に、全ての星が結ばれ一つの平面(2次元)となることで、会議全体が形作られます。どんな形が出来上がるかは会議終了時のお楽しみです。皆さんにはこの1つの「星座」を作る過程を楽しみ、作られた星座を眺めて「この会議で楽しいことができた」と感じてもらいたいと思っています。
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フロント紹介






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会議設計▼
議題正式名称:キガリ改正
設定議場:モントリオール議定書第37回公開作業部会(OEWG37)再会会合
モントリオール議定書第38回公開作業部会(OEWG38)
モントリオール議定書第3回締約国臨時会合(ExCOP3)
モントリオール議定書第38回公開作業部会(OEWG38)再会会合
モントリオール議定書第28回締約国会議(MOP28)
設定日時:2016/07/15〜10/14
募集人数:最小15~最大30
事前交渉・事前会合なし
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論点解説▼
大論点① 「HFCの段階的削減について」
MOP28のメインとなる論点で、HFCをモントリオール議定書の規制対象物質に加える際の規定について議論していただきます。本会議では、先進国(非第5条締約国)と発展途上国(第5条締約国)の2つのグループに大きく分かれ、各々以下の4基準を定めます。
・基準値となる生産・消費量の年度
基準値とは、HFCを削減するにあたってベースとなる生産・消費量のことで、ある特定の複数年度の平均値を基準とすることが各国の共通認識となっています。ただ、どの年度を基準とするかは各国によって主張が異なり、例えばEU等非5条国は早めで、インド等5条国は遅めの提案をしています。
・基準値に含むCFC・HCFCの生産・消費量の割合
実はキガリ改正で定められた基準値にはHFCの生産・消費量だけでなく、CFC・HCFCの生産消費量も含まれています。これらのCFC・HCFCの生産・消費量をどれだけ今回定める基準値に含むのか、その割合については議論の隔たりが見られます。
・凍結年(削減を開始する年)
基準値に基づいた削減を開始する年を凍結年と呼びます。この凍結年は非5条国・5条国によって無論異なるのですが、この年度をいつにするのか皆さんには議論していただきます。一刻も早い削減対策の実施と各国が抱える経済発展やセクターのバランスを考慮した議論が求められます。
・凍結年以降の削減スケジュールと残余割合
ここでは凍結年以降どのようなペースでHFCを段階的削減していくのか、具体的(3〜5年スパンが一般的)な削減スケジュールを策定していただきます。また同時に、残余割合(最終的に基準値比で何%のHFCを残すか)に関しても議論を深め、より実効的なスケジュールの合意形成を行っていただければと思っています。
本会議の前年に開催されたMOP27では、各グループ内で非5条国・5条国が遵守すべき基準値設定が行われ、北米・インド・EU・島嶼国をそれぞれ提出国とする4本の修正案が提出されました。議場にある4本の修正案を叩き台に、各国がどのように合意形成へと導くのか、自国益と議場益のバランスや会議行動が議場に与える影響を考慮した上で、1つの普遍的な改正案を作成していただきたいと思っています。
大論点② 「HFCとHCFCの関連性について」
MOP28で採択された決議の中に含まれ、OEWGやExCOPで積極的に話し合われた論点です。HFCを規制対象とすることで、HCFCをHFCへと転換したりHFC生産を主要産業に切り替えていたセクターは、もう一度転換作業(二重転換)を行う必要が出てきます。過度な二重転換を避けるために各国・各セクターはどのような指針で段階的削減を行うのか、既にHCFCから温室効果の高いHFC(高GWP HFC)への転換作業を進めているセクターへの補償は如何するのか、皆さんに話し合って議論を深めていただきたいです。
※論点内の争点は変更する可能性がございます。
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国割▼
Afghanistan
Argentina
Belarus
Brazil
Canada
China (ペア推奨)
Cuba
India
Iran
Japan
Kuwait
Micronesia (ペア推奨)
Norway
Russia (ペア推奨)
Rwanda
Saudi Arabia (ペア推奨)
Samoa
Senegal
Slovakia (ペア推奨)
Switzerland
United States (ペア推奨)
※国割は予告なく変更する可能性がございます。
※この会議ではトリでの参加/ペアマッチングは想定しておりません。
※ペア/シングル推奨国は、参加人数や今後の協議により変更する可能性がございます。
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会議の特徴▼
【議題の特徴】
・基礎知識量に差がない議題
環境系議題の中でも、キガリ改正はおろかモントリオール議定書締約国会合(MOP)さえ過去に模擬国連で扱われたケースがなく、デリには知識を1からつけて臨んでもらう必要があるため、平等性・新規性が担保されています。過去に参加した会議で積み上げた知識によって開始前から知識量の差が出ることなく、新メンから神メンまで新鮮な心持ちで議題と向き合い、会議を楽しむことができます。また、高度な法議論やロジックを必要としないので、ハードルを高く感じず参加できる会議です!
・実生活にも関係する身近な議題
この議題は、会議内での大使を飛び出して皆さんの実生活にも深く関わってくる身近な議題となっています。また、HFCの段階的削減に関する代替冷媒の技術開発は現在進行形で進められているトピックであり、今を生き未来を担うことになる皆さん自身がこの議題を自分ごとと捉えて向き合ってほしいと思っています。
ぜひ大使として最善の会議行動を考えながら、「自分だったらどう向き合う?」という疑問を常に持ち続けてください。
・各国の思惑が交差する自由度の高い会議設計
環境系議題の中には、欧米などの先進国vs発展途上国の二項対立に収束してしまい、自国独自の会議行動がなくなってしまう会議が存在します。私はそのような会議に対して、参加者全員がそれぞれの「楽しさ」が失われてしまうと感じてしまいます。
一方で本会議では、大論点①で挙げた4つの基準や大論点②のそれぞれの争点において、全参加国が独自の国益を持ち、争点に沿ったグループに縛られない会議行動が鍵になっています。デリはコンセンサス達成という議場益と国益を照らし合わせて戦略を練る必要があり、高い戦略性と深い知識が必要かつ自由度の高い設計となっています。つまり、会議のスタートからゴールまで全員に役割がある会議なのです。
【会議設計上の特徴】
・会議前のフロントサポート:メンターと事前勉強会
この会議ではデリの皆さんに模擬国連の「楽しさ」を見つけてもらえるよう、フロントからいくつかのお手伝いをさせていただきます。
まず一番最初に、皆さんの模擬国連観について語り合うメンターを実施します。模擬国連の楽しいところ・楽しくないところ・得意なこと・苦手なことなどなど、皆さんの模擬国連ポリシーについて語ってもらうことで、フロントとの交流を深めると同時に私たちがデリ一人一人の個性を知る機会とします。もちろん私たちも自分の模擬国連観をお話します、一緒に語らいましょう!
またZoom形式(予定)の事前勉強会では、最後にデリ同士のディスカッションを予定しています。【議題の特徴】で挙げたように、「個人ではどう考えるか」に重きを置いたアウトプット練習を促すとともに、初対面のデリの考え方を理解し会議当日の相手を尊重する議論が生まれやすくなることを期待しています。
キガリ改正は各国の戦略・会議行動が鍵となる会議ですので、もちろん各人の進捗状況に応じてリサーチ補助も行っていきます。他にもデリの皆さんが「楽しい」と思えるようなお手伝いを計画中ですので、乞うご期待ください!
・会議後のフロントサポート:レビューとアフターケア
私たちの会議では「質の高いレビュー」の達成が次以降の会議へと繋がる重要な要素と考え、実現のためにいくつかの試みを行います。
会議後はまずその場でレビューシートを書いてもらおうと思っています。記憶が新しいうちに自分から見た会議の経緯、今会議で楽しかったことや逆にうまくいかなかったことなど、感情をシートにぶつけてほしいです。書いてもらったシートをもとに大使間や議場間で意見を共有する場が作れたら、と考えています。また会議当日や終了日にフロントとのプチレビューメンターを設け、フロントに対しても言語化していただくことを目指しています。
後日行うレビューでは、レビューシートの内容を総合して表層的な流れをさらうだけでなく、フロントだからこそ見れる視点での質の高いレビューを行います。また各国大使館のデリ一人一人に対して、フロントから見た良かった所・楽しめてた所・次に活かせそうな所のフィードバックを行います。もらった側はもちろん書いたフロントもモチベーションが向上し、「会議って楽しい」の好循環を生み出す原動力になると確信しています。
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参加者へのメッセージ▼
こんにちは!今回会議監督を務めさせていただく四ツ谷研究会神メンの栗林孝匠です。
まずは北陸大会とキガリ改正に興味を持っていただきありがとうございます!議題解説・コンセプト解説・論点解説・会議の特徴に私たちがこの会議に込めた想いをたくさん詰め込んだつもりです。最後まで読んで「なんか楽しそう」「自分のやりたいことができそう」「出てみようかな」と思ってくれたら会議監督冥利に尽きますが、決まった字数では伝えきれないことも多々あったので、疑問点や詳しく知りたい点があればじゃんじゃんアプライ前メンター・SNSのDMでたくさん話しかけてくださいね。みなさんと対話できることをとーっても楽しみにしています!
実はキガリ改正は模擬国連で初めて扱う議題で、フロントメンバーもこの一期一会の出会いを楽しんでいます。ここで、私達の会議が求める人物像を軽く紹介します。
・今漠然と模擬国連が楽しくて色々な会議に挑戦してみたい人
→自分を今一度見つめて「模擬国連のどこが自分は楽しいのか」を言語化・再発見してもらいたいです。
・今行き詰まっていて先が見えていない人
→この会議に出ることで自分の楽しみを見つけるきっかけにしてほしいですね。あるいは「今楽しくない部分」を明確にして立ち直るきっかけになると嬉しいです。
・模擬国連の楽しみ方がまだ分からない人
→議論すること・会議が動くことに楽しみを感じてほしいです。なぜなら議論はどの会議にも必ず存在するし、議論に楽しみを見出せれば今後出る会議も楽しみをもって携わることができると考えているからです。
・既に自分の楽しみ方を会得している人
→自分が会議で楽しむのに加えて議場全員がより「楽しい」と思えるような貢献をしてほしいです。
などなど、コンセプトに共感してくれた方は誰でも大歓迎です。繰り返しになりますが、私たちは「参加してくれたデリ各々の楽しみを引き出すお手伝いがしたい」のです。そのためデリに制限は設けませんが、「この会議を楽しみたい」「自分の楽しいところを見つけたい」と思ってくれる人がたくさん集まることを願っています。是非一緒に作り上げた「星座」を眺めましょう!北陸・金沢で皆さんをお待ちしています。
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